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2014年夏学期

数学ー革新の歴史と伝統の力

コーディネータ: 坪井 俊 (理学部)
ナビゲータ: 緒方 芳子 (理学部)
  • 数理科学
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 現代の数学はその長い歴史に支えられている。客観的な状況の評価や合理的な意思の決定のために数学は用いられてきた。人類が様々な事象に出会うたびに、それに対応するために数学は革新されてきた。数学の論理、数の概念は長い歴史の中で何度も問い直された。座標の方法の定着、複素数の発見、微分積分の創始など、高等学校で学ぶ数学の革新の後にも、幾何学の公理、連続の概念、変換の概念などを巡り、数学者の研究は進化し、新しい理論を生み出してきた。

 数学は一方でそれ自体の整合性を求め創造的革新的に発展してきたが、他方で社会との関係の中で様々な飛躍を行ってきた。前世紀には数学の抽象化、形式化が大きく進んだが、これにより数学の応用範囲は拡がった。数学は科学の基礎として人々の事象のとらえ方に大きな影響も及ぼしてきている。

 このような社会との相互作用の中で、数学の革新はそれまでの研究成果を止揚する形で進んだ。時には必要な応用への準備が数学の自体の中で前もって準備されているようなこともあり、現実の諸問題への数学の応用は社会から期待されるものになってきている。確率や統計の概念は、客観的な状況の評価や合理的な意思の決定のために現代の社会において重要な役割を果たすようになった。計算情報技術の大幅な進歩の中で、完成度の高い数理モデルの構築へむけて、現象を観測、分析、統合する側と数学の道具を開発する側の協働作業がますます必要とされている。

 この講義では、これまでの数学の革新の歴史を振り返るとともに、そこで培われた伝統の力が新しい現象の理解、社会の問題への対処のためにどのように使われてきたかを、数理科学に関係する第一線の研究者に語っていただき、皆さんに数学の創造の現場の様子をお伝えしたいと思う。

数学のかたち

第1回  4/10 数学―伝統の力

第4回  5/8 数学―発想の力

岡本和夫 (名誉教授/大学評価・学位授与機構)

数学が創られていく過程を、数学のかたち、の視点で問直してみたい。題材として使う数学の内容は高等学校で学ぶ範囲に限る。そうしたとしても、数学的な発想がどのように形作られてきたかを考えることは、皆さんがいわゆる文系や理系の科類のどちらに所属しているかにかかわらず意味のあることと思うからである。1回目では全体の導入も含めて数学の役割について考えることとし、2回目では数や図形を題材に楽しい数学、数楽、を紹介したい。

整数と有理数の狭間で

第2回 4/17 整数と有理数の狭間で その1

第3回 4/24 整数と有理数の狭間で その2

石井志保子 (理学部)

整数や有理数に関するいくつかの問題をとりあげ,現代数学の問題意識と高校までの数学の問題意識の違いを浮き彫りにする。

確率過程モデルの発展の歴史

第5回 5/15 確率過程モデルとしての双六

第6回 5/22 確率微分方程式のアイデア

楠岡成雄 (理学部)

確率過程モデルは、時間と共に不確実に変化していくものを記述する道具として、工学、経済学、ファイナンスなど様々な分野で用いられている。講義の第1回では複雑な双六である離散時間のマルコフ過程モデルについて解説する。このモデルにおいて時間・空間を連続化するということは誰でも思いつくことだが、数学的には簡単なことではなかった。第2回目の講義では、時間連続なマルコフ過程モデルを作り上げていった数学者たち(レヴィ、コルモゴロフ、伊藤)のアイデアについて歴史に沿って述べていく。

統計学の過去と未来

第7回 5/29 統計学の歴史

第8回 6/5 統計学の今後

竹村彰通 (工学部)

統計学は英語では statistics とよばれるが、 stateは国家を意味しており、歴史的には社会や国家の現状を数量的に把握するための方法として発展してきた。その後確率論と結びつくようになり、20世紀初頭には数量的なデータや不確実性を含むデータを扱うための一般的な方法論として確立された。最近では、ビッグデータの時代と言われるようになり、社会や自然現象について得られるデータの量が急激に増加しており、統計学が注目されるとともに、統計学に要求される方法論も変化している。このような統計学の歴史と、今後の社会で果たす役割について説明する。

指数関数と微分方程式

第9回 6/12 複利と指数関数

第10回 6/19 残留放射性物質量を記述する方程式の抽象化

第11回 6/26 抽象論で微分方程式を解くには

儀我美一 (理学部)

数学は抽象的で現実離れしているといわれることもあるが、この抽象性こそ広汎な応用を生み出す原動力である。本学出身の吉田耕作教授が創設した抽象論が、微分方程式の研究を一新したことを例に解説する。

金融危機への対処と数理科学-前日本銀行副総裁の経験と省察

第12回 7/3 世界金融危機と数理的思考

第13回 7/10 楽観と悲観の数理経済学

西村淸彦 (経済学部)

数理科学の抽象的で簡潔な世界と現実の複雑な市場経済はおよそ対局にあると考えがちである。複雑な市場経済を予測する際、構造は安定していると考え過去のデータから将来を推測する。ところが世界金融危機前後ではこの構造が大きく変化し、過去の経験が将来の予測に役立たない状況になり、金融市場は楽観と悲観の間で大きく揺れ動いた。このとき「ほとんど未知の状況で人間は「合理的」にどのように行動するのか」を考える数理経済学的な思考が事態の対処に重要であった。講義の前半では、金融市場でどのような過去に類を見ないことが起こったかを説明し、後半で、それに説明を(しばしばunknown unknownsと呼ばれる)根源的な不確実性がある時の経済主体行動の数理的考察から与える。

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